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『お前さぁ、なんなの。もういい。』
『え?』
『どうするか迷ってたけど、お前、転勤ね。関西。いい?わかった?』
『あ、え…』
『本当さ、仕事もできないし。東京より支店に行ってよ。よろしくね。』
そう言われて飛ばされた俺。
仕事ができない、か…。否定できないけどさぁ。
彼女もいない俺が引っ越した先は、けっこう田舎。でも交通面では不満はないし、畑だけかと思ってみれば逆で海が近い。
「つっかれたぁ…」
俺の住むマンションからも、少し歩けば海につく。
家に帰るべく、ぶらぶら手にコンビニで買った缶ビールをさげて歩く。
「あーあ…」
もう少し歩いてみようかと思って、ため息のような諦めた感じの声が勝手に出た。
マンションを通り過ぎ、海を目指す。
「星も見えね…」
曇りだったけ…。
砂浜までにあるコンクリートの階段に腰をかける。
コンクリート製の階段は意外と波打ち際と近く、ザブーンと波の音が余裕で聞こえる。
砂浜を歩けば靴に砂が入るんだろうな、と都会では気にすることなんて、日常ではないことを考える。
何も見えない空を仰ぐ。
真っ暗。
俺の未来も真っ暗なのかも。
その日から俺は、仕事で失敗したり、落ち込んだり、事あるごとに海で飲んだ。
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