日常の2

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昨夜、わたしとうさぎは恵比寿のスタンディングバーに来ていた。 2月にオープンしたばかりで、二人とも気になっていたお店のひとつである。 20時過ぎに入店すると、店内はすでに満員だった。 スタンディングということもあり、まさにすし詰め状態である。 「これ、入れんの?!」 「わからない!けど、行くしかない!」 「だね!」 突き進む覚悟を決め、人混みの中を奥へと進むと小さな丸テーブルがぽつんと空いていた。 ちょうど人がいなくなったところなのだろうか。 思いがけず居場所を確保できたわたしたちが、コートを脱ぎひと息つこうとしていると背後から声が聞こえた。 「ねぇ、一緒に飲もうよ!二人で来たの?俺は友達待っててさ。なかなか来ないから一人なんだよ。いるところがないから、ここにいていいかな?ね?いいよね!」 一人のサラリーマンらしき男が声を掛けてきたのだ。 とっさに目の前のうさぎと目が合う。 そしてわたしは理解した。 「えっと、わたしたち今来たばかりで、お酒もまだ頼んでないんです。だから…」 こういうとき、口火を切るのはいつもわたしの役目である。 基本的に人見知りをしないのが長所であると自覚している。 「あぁ、そうだよね。気が付かなくてごめん。俺もお酒注文しに行くとこだから、一緒に行こっか」 そう言いながら、手元のお酒を飲み干したサラリーマンをみて、わたしはまたうさぎに視線を送るのであった。
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