日常の2

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この店は、中央にあるカウンターへセルフで注文しにいくスタイルである。 支払いは注文の都度行い、空いたグラスも各自でカウンターへ持っていかなければならない。 混んでいるのでいちいち面倒臭く感じるが、それでもこれだけ人気なのは、立地に比べて格安で飲めるからだろう。 サラリーマンは隣にいたうさぎの肩をつかむと、そのまま人混みへと連れて行こうとしていた。 「あ、ちょっ、えっ、春ちゃんは何飲む?!」 急な出来事に戸惑いながらも、うさぎは重要な質問を投げかける。 「えっ、あっ、えっと、な、なんでもいい!」 その質問に対し、わたしはベストな返答ができなかった。 ハプニングに弱いところはわたしの短所だ。 短い会話すら遮られ、あっという間に人混みに埋もれていったうさぎをみながら、あいつはないなとわたしの思考は結論を出したのであった。 そもそもこの店がナンパスポットであることは承知していたし、あわよくば良い出会いがあるかもなんて期待もいていたが、実際に目の当たりにすると何故かげんなりしてしまう。 これも歳のせいだろうかと考えていると、今度は二人組みの男性が目の前に現れた。 うさぎが連れ去られてまだ数十秒である。
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