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「お姉さん一人なんですか?」
二対一という主導権を奪われた状況に多少ビビりながら、さっきのサラリーマンは一人でよく声掛けれたなと関係ないことを考える。
「あ、サラリーマンが…じゃなかった!えっと、友達と二人で来ていて…」
「お、じゃ、ちょうどいいじゃん。俺らも二人なんで一緒に飲みません?」
「いや、友達が戻ってこないとなんとも…、というか友達が拉致られてて…」
そんな冗談を言えたのはすでに平常心に戻っていたからだろう。
そして、どうやってこの場を乗り切ろうか考える。
「とりあえず友達が戻ってき…」
「俺が友達連れ戻してくるよ!どの子?」
「…あ、え?!」
「大丈夫っすよ。先輩がいってきてくれるんで。俺らは飲んでましょ。これ飲みます?」
そう言って飲みかけのグラスを渡される。
「どんな感じの子?服装とか」
「え、えっと、髪がセミロングで白いニットの……あ、今レジのとこにいる子です。あのサラリーマンと一緒にいる…」
「あぁ、分かった!あの子だよね?ちょっと行ってくるわ」
「あ、えぇ…」
「まぁまぁ。先輩に任せて先に飲みましょ!ね、飲んで飲んで!」
恵比寿にいるナンパ野郎は強引なやつばかりなのか。
そんなことを考えていると、先ほどのグラスを口元に押し付けられ、思わず一気に飲み干してしまった。
「うげっ、これブランデー?!」
「あ、苦手でした??」
この時点で、もうどうでもよくなってしまったのかもしれない。
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