願い

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それから、嘘のような出来事がいっぱい起こった。 私は12星座の魔法少女の一員として迎えられて、すでにいる魔法少女達とも面会を済ませ、仲間となり、世界にはびこる人々の心の闇が具現化した敵と戦う日々がやってきた。 最初に私を助けてくれた王子とも……私に気があるんじゃないかって思えることがいっぱいあって、とっても仲良くなって…… わかってる、なんとなく。 これは夢なんじゃないかって。 どこからがそうなのか、もうよくわからないけれど。 でもそれでもいい。 お願い。 夢なら醒めないで── テレビの音が聞こえる。 『先日起こったトラック暴走事故で、被害者の高校一年の少女の意識はいまだ戻らず──』 ピッ ピッ ピッ 敵と死闘の最中、頭の中で音が鳴り響く。 「大変! このアラーム、魔法が解ける時間だわ! 早く倒さないと!」 仲間が私に必死に訴えかけてくる。 私は不敵に笑みを浮かべ 「大丈夫! 今すぐ倒すから!」 持っている杖を大きく振りかざす。 「あらビデオ終わっちゃったのね。もう一回流してあげるからね、乙女」 中年の女性はリモコンを操作して、娘が好きだったアニメを再生する。 心電図の音が規則正しく響き続ける部屋で、少女は眠り続ける。 「夢なら醒めないで」
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