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「んううっ!!」
チョコレートの付いたコーンを咀嚼している途中で、ぼくは立ち上がった。
父さんの手が短パンの下に潜り込み、下着の中にまで入って来ようとしたからだ。
何でそんな変なことをするんだ、とぼくは父さんを振り返った。
父さんの顔はいつもと違った。笑ってはいなかった。けど、怒っているのとは違う。
目は熱っぽく、ぼくの口元や、胸元や、アイスクリームを持った手元を順繰りに見た。その視線がはっきりと分かるほどに、その一か所一か所を凝視した。
怖くなった。
お菓子を貰えるなら、ちゅーをするくらいどうってことないといつの間にか思うようになっていた。けれど、それ以上のことについて、ぼくはそれほど無知ではなかった。
クラスメイトの話だって聞こえてくるし、父さんと母さんが夜中していることも、知っている。
それを求めていることが分かって、目の前が暗くなった。
「いや、です」
来ないでくれ、とコーンを持っていない方の手を突っ張った。父さんはいつもぼくに乱暴なことをしなかったから、そうすれば止めてくれると思っていた。
けど、違った。
父さんはぼくの手を引っ張った。その拍子に、宙を舞うアイスクリーム。それは、ぐしゃっとテーブルの端のぎりぎりの所に落下した。
ぼくは床の上に引き倒されて、仰向けになっていた。
いつだったか、これと同じように頭がぐわんぐわんとなっていたことがある。こうなると、目は開いているのに動けなくなってしまう。
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