海鳥は夜空に煌めく

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「うん?」 「よろしくね、フィン」  穏やかな笑顔に、フィネガンは少々引きつりながらも笑い返し、その手を握った。だがーーフィネガンは理解していた。自分が今はめている指輪の意味を。  指輪に彫られているのは、翼の生えた獅子の紋章。それは、この海域一帯を治める王族を示すものだった。 ※※※  フィネガンが拠点としている洞窟は、浜辺から十五分程、内陸に向かって歩いた場所にある。島の中央部は森になっており、道中で木になっている果実を取りながら歩く。 「食い物は、こいつの他には浜辺で小さな蟹や貝が取れる程度だ。運が良ければ蛇くらい獲れるかもしれねぇけどな」  「成る程」と、名無しが丁寧に頷く。 「危険な獣はいないのかい?」 「まだ遭遇したことはねぇな。ただ、絶対とは言えねぇ」  それに、とフィネガンは島の北側を指した。森からでも目視できる、高い岩山がそびえている。 「あそこが、魔女共の住み処だ。飛んでいる影を何度か見かけた。直接人間を喰うって話は聞いたことねぇが、まあ用心するに越したことはない」  洞窟に着くと、水の入った瓶を奥へと並べていく。外よりも少しだけ気温が低く、ひんやりとしている。 「当面はなんとかなるとして、その後どうするかだな」  運んだ瓶を睨みながら、フィネガンは顎に手をあてた。 「水の量には限りがある。水瓶の入っていたのは二箱。一箱につき、二十四本入ってた。つまり、一人あたり二十四本だ」 「一日一本で賄うとしても、二十四日しかもたないということだね」  「長くてな」と、フィネガンは小さく息をつく。 「水は腐る。保存にまず気をつけにゃ。あとはこの島の暑さに、一日一本の水分量で身体がどれだけもつかだな」  話ながら、すでに顎を汗が伝っていく。それを拭い、フィネガンは目に手をあてた。 「暑い時間帯はせめて涼しい場所にいたいが……水が波にさらわれちゃ終わりだ。満潮前に浜に戻って残りを運ぶか」
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