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名無しもそれに頷き、外に出たときだった。唐突に大風が吹き荒れる。
「なんだっ!?」
舞い上がる土煙に、慌てて手で顔を庇う。ごうと音を立てて吹いた風は、しかしあっという間に止んだ。
「……なんだ、今のは」
おそるおそる周囲を見渡すと、見覚えのあるものが地面に転がっていた。木箱だ。
「こりゃ、浜辺に置いてきた瓶の箱じゃねぇか、なぁ?……名無し?」
呼ばれ、名無しがはっとした表情になる。
「ごめん、ちょっと驚いちゃって。えっと……少し割れてるけど、大方無事だね」
箱の中身を確認しながら、名無しが首を傾げる。
「でも、なんで……風で転がってくるような距離じゃないし」
周りを見ても、先程の風で木が多少折れている他、変わったところは見つからない。
「……まぁ、怪物の住む島だ。何が起きた所で驚かん。よく分からねぇがラッキーだ。取り敢えず、こいつらを奥に運ぶか」
そう、箱に近づいたときだった。地面に、草よりも鮮やかな緑色のものを見つける。
「こりゃ……羽根か? 随分でかいな」
手に取ると、羽根は角度によって微妙に色を変えてきらきらと輝いた。手のひらくらいの大きさがある。
「こんな羽根じゃ、本体もかなりでかいぞ」
空は快晴で、強い陽射しばかりが降り注いでいる。「参ったな」と、フィネガンはぼやいた。
「どうしたんだい?」
「いらん奴等に、目をつけられたかもしれねぇぞ」
不思議そうな顔をする名無しに羽根を押し付け、フィネガンは大きく息をつきながら、木箱の中の瓶を集め始めた。
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