海鳥は夜空に煌めく

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※※※  他に灯りがないためか、島の夜は空がかえって明るく見えた。満ちた杯から溢れ落ちたかのように、数多の白い星が空一杯に散りばめられ、輝いている。 「多分、ここからが一番登りやすい」  岩場のふもとでフィネガンが説明すると、名無しは少し驚いた顔をした。 「なんだ。フィンも上ろうとしたことがあるんだ」 「リスクが高すぎるから止めたんだよ。俺は賢いからな」  手足を解しながら「良いか」と言葉を続ける。 「正直、魔女云々以前に、この岩場を登るってこと自体が危険だ。降りることも考えて、手足が疲れてきたと思ったら途中で引き返せ。とにかく、手よりも足の置き場に気をつけろ」 「さすが、高い所に登りなれてる感じだね」  名無しが笑い、ふと首を傾げる。 「でもこんなに暗いと、遠くを見て島があるかどうかなんて分かるかな」 「今日はよく晴れてるから、海は星の光を反射する。一部分だけ暗いところがありゃ、それが島だ。  ーーいいか。周囲を確認して他に島があったところで、そこの環境がここより良いかも分からん。ここで無理しすぎるとバカを見る。あんたが本当に死にたいんじゃなけりゃ、無理するな」  名無しが、きょとんとこちらを見ているのに気がつき、フィネガンは眉を寄せた。 「なんだよ」 「いや」  星明かりの下で、名無しが笑う。ふっと、目尻を緩めて。 「フィンは、優しいなと思って」 「心の友だからな。アホ言ってないで、さっさと行け」 「うん。でも」  くすくすと笑いながら、名無しは岩場に手をかけた。フィネガンに背を向け、一歩目を踏み出す。その後ろ姿が、月の薄白い光に照らされる。 「無事に戻れたら、僕ら本当の友達になりたいな。これだけ星が綺麗な夜なんだ。一つくらい、願いを託せる星が、いるかもしれないよね」
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