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「もう店閉めちゃいましょうか?マスター」
ダイゴは同じグラスを何度も丁寧に磨きながら俺に言う。
時刻は午前2時。
オレンジ色の薄明かりの下、8人程座れる小さなカウンターは小綺麗に片付いている。がさつな俺には出来ない。
潔癖症であるバーテンダー、ダイゴのおかげだ。
こんなバーで働くより他に仕事あるんじゃねぇか、俺がそう言うと彼は、腐れ縁ですよと笑う。
「いつまで僕らこうして過ごせるんですかね、ちょっと不安ですよ」
「さぁね。何とかなるんじゃないの?いいバーテンもいる事だし。問題ないって」
「何も出ませんよ?そんな事言っても」
「後、1本ね?」
軽いため息をついて、ダイゴは小さな冷蔵庫から瓶ビールを2本カウンターに置いた。
「あれ?1本多くないか?」
「僕の分ですよ、何か不服でも?」
「ねぇよ。じゃあ、改めて乾杯!」
「…はいはい。明日頭痛いとか言わないでくださいよ」
2人で笑いながら、ビールを胃に流し込む。昔からこうしてつるんでいるが、ダイゴと飲む酒はうまい。
気の合う奴と毎日だらだらと店をやっている自分は、意外と幸せなのかもしれない。
そう感じながら酒の余韻に浸っていた。
「大丈夫です?」
「ん?何か…珍しく酔ったな。疲れてんのかな」
「何も疲れる事してないじゃないですか」
「確かに」
午前2時30分。
まどろみに身を任せ、俺は煙草に火を点けた。
いつもと変わらないはずの夜に…。
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