第1章 孤独のトンネル 前編

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「もう店閉めちゃいましょうか?マスター」 ダイゴは同じグラスを何度も丁寧に磨きながら俺に言う。 時刻は午前2時。 オレンジ色の薄明かりの下、8人程座れる小さなカウンターは小綺麗に片付いている。がさつな俺には出来ない。 潔癖症であるバーテンダー、ダイゴのおかげだ。 こんなバーで働くより他に仕事あるんじゃねぇか、俺がそう言うと彼は、腐れ縁ですよと笑う。 「いつまで僕らこうして過ごせるんですかね、ちょっと不安ですよ」 「さぁね。何とかなるんじゃないの?いいバーテンもいる事だし。問題ないって」 「何も出ませんよ?そんな事言っても」 「後、1本ね?」 軽いため息をついて、ダイゴは小さな冷蔵庫から瓶ビールを2本カウンターに置いた。 「あれ?1本多くないか?」 「僕の分ですよ、何か不服でも?」 「ねぇよ。じゃあ、改めて乾杯!」 「…はいはい。明日頭痛いとか言わないでくださいよ」 2人で笑いながら、ビールを胃に流し込む。昔からこうしてつるんでいるが、ダイゴと飲む酒はうまい。 気の合う奴と毎日だらだらと店をやっている自分は、意外と幸せなのかもしれない。 そう感じながら酒の余韻に浸っていた。 「大丈夫です?」 「ん?何か…珍しく酔ったな。疲れてんのかな」 「何も疲れる事してないじゃないですか」 「確かに」 午前2時30分。 まどろみに身を任せ、俺は煙草に火を点けた。 いつもと変わらないはずの夜に…。
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