十三夜

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「ねえ。お父さんは子どもの頃、テレビを観ないで勉強してた?」 「そうだねえ……テレビも観てたし、ちゃんと勉強もしてたよ」 「えー、なにそれ」 期待はずれな返答に、口を尖らせる。 おばあちゃんは不意に窓の外を見て、 「高ちゃん、明日は十三夜だねえ」 と、のんびりした口調で言った。 「あー、うん……知ってる」 おばあちゃんは毎年、十三夜の日を心待ちにしている。 「十三夜の日に、高ちゃんのお母さんが月を眺めていたらね……」 「お腹が痛くなって、すぐに僕が生まれてきたんでしょ? おばあちゃん、何度も言わなくても分かってるよ。耳にタコができちゃったよ」 「あらあら、ごめんねえ。おばあちゃん、高ちゃんがお月様に導かれるようにして生まれてきてくれたのがうれしくてねえ。つい、話したくなっちゃうんだよねえ」 おばあちゃんは感慨深げに言ったあとで、「あ」と何かを思い出したように呟いた。
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