十三夜

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十三夜

「十三夜の日に、(たか)ちゃんのお母さんが月を眺めていたら、お腹が痛くなってねえ。すぐに高ちゃんが生まれてきたんだよ。 お月様に導かれるようにしてね、生まれてきてくれたんだよ」 毎年、十三夜の日が近づくと、おばあちゃんは僕にそう話してくれた。 そして昨年、おばあちゃんは初めて僕に教えてくれた。 「高ちゃん、実はね、十年に一度だけ、お月様が願い事を叶えてくれるんだよ。十三夜に生まれた子にだけ、特別にね」 来年の十三夜が、楽しみだねえ─── 穏やかで優しい声は、今も耳に残っている。 先日、僕は十歳になった。 けれど、僕は今年、おばあちゃんと一緒に十三夜を見ることはできない。 おばあちゃんは今頃きっと、おじいちゃんに十三夜の話をしているだろう。 遠い遠い、空の上で。 ニコニコと、嬉しそうに目を細めながら。
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