十三夜

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おばあちゃんは優しく尋ねた。 「また、お父さんに叱られたの?」 「だって、お父さんてばずるいんだよ。自分はスマホばっかいじってんのに、僕がテレビ観てたら、『テレビばっか観てないで勉強しろ!』って怒鳴るんだよ。 今もさ、スマホでゲームやってんの。それなのに、僕を叱るなんて、おかしいでしょ?」 お父さんは、おばあちゃんの息子とは思えないほど、ものすごく短気だ。 小さなことで、ガミガミガミガミ、すぐ怒る。 「お父さんは自分に甘くて、人にはすごく厳しいんだよ。やってらんないよ」 「そうなのねえ」 「さっき僕が文句言ったら、『お父さんに向かってなんてこと言うんだ!』ってカンカンになっちゃってさ。子どもに指摘されて、逆ギレしてんだよ」 「あらあら」 おばあちゃんは笑った。 顔のシワが深くなる。 おばあちゃんはいつもニコニコしている。 僕がお父さんのことを訴えても、決してお父さんを叱ってはくれないし、一緒に悪口を言ってもくれない。 そこはちょっぴり物足りないけれど、おばあちゃんに話を聞いてもらうと、スッキリする。 それに、自然と怒りも収まる。 ニコニコしているおばあちゃんを見ていると、怒っているのがだんだん馬鹿らしくなってくるからかもしれない。
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