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「何言ってんのバーカ。そんな夢ならうなされてそんな汗だくになんてならないでしょうが。て言うか、兄ぃのサイズじゃ大っきくなってもせいぜい親指大でしょ。小っさい山作んのが関の山だって」
「誰が親指サイズだ、人差し指くらいはあるわっ」
「朝から下ネタ言えるくらいの元気があるなら大丈夫だね。ママが下にご飯作ってるって。それじゃ、あたしは学校行ってくるから」
…情けない。美海の心配を紛らわそうとして言った言葉を逆手に、気を遣わせてしまうとは。
「そうそう、パンツは自分で洗ってね。さすがに処理後のパンツと一緒に洗濯は嫌だし」
廊下へ続くドアを開けながら放たれた言葉は、俺の心を切り裂いた。
ともあれ、しばらくは起きる気力もないし、ダラダラしてるか。
またさっきの悪夢が蘇らないことを祈りつつ、俺はそのまま眼を閉じる…。
『汝、我が導きに応えよ…英雄召喚(ヒロイックサモン)…!』
「…っ!?」
突然女性の声が頭を巡り、驚いて眼を覚ます。
だが、場所は見知ったベッドの上だ。
変わっているのは、朝よりも暗くなった部屋。カーテンの隙間からはオレンジの光が射し込んでいる。
もう夕方か。いつの間に完全に眠ってしまったのだろう。
今の声も、見ていた夢を寝ぼけて現実と混ぜてしまったのだろうか。
「……腹、減ったな…」
そういえば、母さんの作った飯が下にあるんだっけ。
今朝の美海の言葉を思い出し、体を起こす。
「くぅ…」
急な体勢の変化からか、少し目眩にも似た感覚を覚える。
頭を振って気を正そうと、壁の方に顔を向けると…。
「…なんだ…これ…」
そこには、以前までただの白い壁であったはずのところに、まるで蛍光ペンで描かれたかのように青白く発光する、幾何学模様が浮かび上がっていた。
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