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乱れた息を整えながら、頭を整理する。
これで分かったことは、これがイタズラではないということ。だが、この模様がいつ、どうやって現れたのかは不明なままだ。
「………」
少し悩み、また模様に手を伸ばすことを決める。
このまま放っておいたところでこれは消えないだろうし、さっきの件で手を入れた程度ではなんの影響もないことは分かった。それならば、さっきよりも冷静な今の状態でなら、手を入れた時の感覚から何かが分かるかもしれない。
「…よし…いくぞ…」
『ズニュ…ゥ…』
…少し、空気が暖かく感じる。これは外の空気だろうか。明らかに家の中の空気とは違う。
これは…冷蔵庫の外装を『通過』しているのではなく、外へ『転移』しているのではないか…?
「ただいま、兄ぃ、なにやってんの?」
「うわぁぁっ!?」
驚きのあまり上ずった声を出し、引っ込めた手を隠すようにして固まっている兄貴を、妹の美海は訝しげに見ていた。
「…本当、なにやってんの…。冷蔵庫漁ってたくらいでそんな怒んないよ。そこまで構えられるとちょっと気分悪いじゃん」
「す、すまん…。でも、今そこに魔法陣が…」
「は?魔法陣?って…」
美海が俺の指差した魔法陣を見て、一瞬黙る。そして、冷ややかな眼差しで微笑みながら、
「…兄ぃ…。これ消せるんだよね…?あたしを怒らせたくなければ、今すぐ消してくれるかな…」
と静かに怒りを表した。
「待て待て、これ本物だからっ。今確認したところだしっ」
「んなわけないでしょっ!早く消しなさいっ!」
聞く耳なしだな。仕方ない、さっきも手を入れても何も起こらなかったし、手を入れて証明するしかない。
「ちょっと待て、そんなに言うなら見てろよ、これが本物である証拠を見せてやる」
そう言って腕を捲り、俺は冷蔵庫に浮かび上がった幾何学模様に右手を入れた。
『ズニュ…ゥ…』
「…うそ…。え、なにこれ、マジック…?」
「いや、本物だ。さっきベッドで起きた時も、同じ模様が壁に出てな。その時は驚いて引っ込めたけど、どうやら害のあるものじゃないみたいだ」
そう言いつつ、肘まで入った右手を引っ込める。いや、引っ込めようとした。
「っ!?」
そこで、右手に対し誰かに引っ張り込まれるような感覚が走った。
「ちょ、うわぁぁっ」
「えっ!兄ぃ!?掴んで!」
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