66人が本棚に入れています
本棚に追加
「グ…レイ……」
ルナは小さく声にした。
現れた闇の主、その姿をルナは力なく目に映す。
それはルナが始めて見た、吸血鬼の始祖──
真の闇の主の姿でもあった──
双方に広がる黒く大きな両翼の影が月を覆い隠す。
肩から剥き出した翼は何度も大きな煽りを繰り返し、その背後からは滲んだ月光が眩く反射している。
グレイはゆっくり降り立つと赤い双眸の瞳をルナに向けていた。
肌も露に乱れたルナの姿からは、二人が交わったことは一目でわかっていた。
そしてリドリーの唇の両端から滴る血。貪った証しにたっぷりと口元を鮮血で汚している。
グレイは冷たい笑みを浮かべ、リドリーを笑う。
「今まで幾度と慈悲を掛けて餌を狩る機会を与えてやったのに…」
グレイは口にしながらゆっくりとリドリーに近付く。
「まさかこういった形で俺に刃向かうとはな……」
「……っ…」
「最早、覚悟の有無は問わん…お前は一生蜥蜴の姿で冥界の地だを這うがいい──」
「もうグレイ様の力は必要ないっ…っ…ルナは僕のものになった…っ」
「………」
グレイはふっと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!