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「…リドリー…ルナの血に狂ったか───…ならば二人仲良く冥界で暮らせ」
「──……」
グレイの言葉にルナは力のなかった瞼を一瞬だけ見開いた。
裏切ったのだから怒りを買って当然だ。
でも心のどこかでは許して貰えるとそんな望みをもっていた。
遠い意識の中で聞こえてきたグレイの声に耳を疑いたい。
細めた目の前は滲んで何も見えない。
ただ、深く重く感情のない声だけがルナの頭に響く。
リドリーは徐々に肩で苦し気に呼吸する。
閉じた瞳から涙を流すルナを背にしたまま、グレイはそんなリドリーを見据えていた。
「苦しいだろう…お前には余る血だ──…俺が手を下さぬとも勝手に朽ちる」
「……っ…」
息を切らしながら姿勢を構えた姿は明らかに闇の主に背く行為だ。
グレイはどこまでも反抗的なリドリーを静かに見据え、浮かべていた笑みを消し去る。
「──…っ…ぐっ…」
リドリーは自分の躰に起き始めた異変に目を見開いて胸を抑えた。
グレイの傷付けた背中の肉が、ルナの血の力によって再生されていく──
「……っ…」
「お前に通う血よりもルナの血の方が強い──…元から下級のその肉体は傷が深ければ深いほど…お前の命を吸って傷を治す……」
「そ…んなっ…」
リドリーはその場に膝を折って絶望を浮かべた。
今までずっと力を蓄えてきた──
別に闇の主に逆らうことが目的ではなく、自らの力で自由に狩りをしたかっただけだ。
そのために多くの生き血が必要だった──
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