20章 闇への餞

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・ 闇の主はその力を得る餌を狩る機会を与えてくれていた。 満月の夜に開かれる宴。 力無き魔物の為の晩餐を── あとほんの僅かで時を気にせず自由に人間の姿に変われる力を手に入れる筈だった。 “ルナの血に狂ったか” そうだ── 確かに狂わされた。 初めて口にした、余りにも甘美な血の味に── 「ふっ…はは…っ……なんでこんなっ…」 身体を抱き締めて踞る。小さな笑いを溢しながらリドリーは泣いていた。 「伴わぬ力を欲しがれば身を滅ぼす…ルナの血は下等な種族には馴染まん──…贄の印を消せたくらいで俺に敵う力を得たつもりでも居たのか──」 リドリーは踞りながらもグレイに顔を向けた。 「……っ…ルナが手に入ればグレイ様に並ぶ力が入ると思ったんだっ!…もうトカゲではなくなるってっ…暗い土の上はもう嫌だっ…僕は早く力が欲しかっただけだっ…」 泣き叫んだリドリーの声をルナは聞いていた。 優しかったリドリーの取り乱した言葉はルナを小さく失望させた。 結局は魔物── 温かい血の通わぬ魔物── リドリーも… この人も── どんなに“愛してる”なんて人間の言葉を口にしても…… 結局は…これがほんとの姿だ。 ルナは濡れた瞳を細め、目の前の魔物達のやり取りを眺めふと笑みを浮かべた。
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