20章 闇への餞

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・ もういい… 疲れた… ここはとても冷たくて あたしは眠い もう… 何も求めることもない きらびやかな舞踏会も 経験した 一生着ることはないと思っていた綺麗なドレスも着せてもらえた 親にさえ言われたことのない 愛してるなんて言葉を偽りでも言ってもらえた 欲しかったものはすべてもらっている── もう、あたしが生まれてから一体何年… 何百年経ったんだろう── まだ魔物でもない筈なのに、これじゃあたしも化け物と変わらない…… だから もういい あたしは灰になる それで…… いい─── 諦めたルナの瞳から最期の涙が一滴伝う。 それと同時にルナの血に蝕まれ始めたリドリーの躰から硝煙が立ち上る。 リドリーは絶叫を上げて転げ回った。 「うあああっ…グ…レイっ様っ…苦しっ…」 長い脚にすがり、のた打ちながらリドリーはグレイを見上げる。 リドリーの躰は背中からゆっくりと肉が沸騰したように溶けてただれていった。
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