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「ルナ…大丈夫?」
「───…」
リドリーは肩で息を切らすルナを心配そうに見つめ問い掛けた。
ルナはきつく閉じていた目をはっと見開き、酷い痛みを受けていた額に思わず手を当てる。
じわりと滲んだ温い汗だけが手のひらを濡らし、ルナはその手を見つめた。
血もなにも付着してはいない。
あんなに痛かった筈なのに──
リドリーは何が起きたのかもわからず戸惑いを浮かべるルナの頬を撫で、柔らかく目を細めた。
「自由になったんだよ…」
「──…自由に…」
ぽつり呟くルナにリドリーは頷いてみせる。
「グレイ様から自由になったんだ……」
「………」
「もう君はグレイ様のモノじゃない──」
「───…」
「僕のだ──」
「……っ…」
重なるリドリーの影が視界を塞ぎ、ルナの唇を甘ったるい吐息が撫でる。
リドリーのキスを受けながらルナの瞳は見開いたままだった……
“君は自由になったんだ”
「───…」
“もうグレイ様のモノじゃない”
「………」
何故だろうか
見えない捕縛を解かれ、喜んでいい筈なのに、ルナの瞳は次第に涙に溺れていく──
あんなに嫌だった所有物としての立場だったのに、今はその接点さえも消えてしまった。
もう…
あの人のフィアンセでもなんでもないんだ…
ルナの中で小さな想いが壊れていく──
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