20章 闇への餞

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・ ハッハッハッ…──ッ 荒い息を繰り返し、走り回り渇いた牙を湿らすように長い舌でベロリと大きな口を拭う。 鼻をヒクヒクと利かせ周りを見渡し耳を僅かに動かすと、ヴコは突然目を見開いて前を見つめ急に疾走していた。 魔界の森の湿った枯れ葉を撒き散らし、ヴコは一点だけを見据えて生い茂る木々の合間を駆け抜ける。 我が闇の主、グレイの怒りに触れし物── ヴコは逆らった魔物の匂いを嗅ぎ付けていた。 “グレイ様──…” 「──……っ…」 “見つけました…” ヴコから送られてきた声を聞き、グレイは伏せていた赤い瞳を見せて問い掛ける。 “……そうか…よくやった…” グレイは感情のない冷たい笑みを浮かべ口端を緩めた。 “どうされますか…” “お前は一切手を出すな……” “………御意” 素直に従う我が下僕。ヴコは返事をすると自分の目の前の景色を意識に映し、グレイに念を送った。 ヴコから送られた森の映像が、映写機のように鮮明に魔界の森を映し出す── 「魔界の森に身を隠したか……無駄なことを」 グレイは呟くと緩く上げた口角から鋭い牙を覗かせていた。
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