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リドリーは腰を震わせて吐息を強く吐く。
欲に翻弄されて身動きすらできぬ状況で、リドリーは強く目を閉じていた。
早くしなければ怒りに我を失った闇の主に捕らわれてしまう──
森のざわめきを耳にしていたリドリーは瞼を開き、赤い瞳を覗かせる。
ルナと繋がったまま、甘い疼きの押し寄せる躰に揺らぎながら、リドリーはゆっくりと口を大きく開いていた。
「っ…あっ…や!?」
ルナの首にリドリーの長い牙が食い込む。
覆い被さるリドリーの胸を咄嗟に押し上げるルナを、リドリーの腕は逃がさないように抱き締めていた。
「じっとしてっ…グレイ様から身を守る為に力がいるんだ…っ…」
「──……」
口を離したリドリーに叫ばれて突っぱるルナの腕からは力が抜けていく。
あの人から身を守る──
その意味が他人事のように思えてならない。
身を守る
何故?
あたしはあの人の婚約者…
だったのに…
「……ふ…っ」
ルナは顔を歪め涙を滲ませた。
グレイの物ではなくなった現実が今一度、重くルナにのし掛かる。
あの人の物ではなくなった今、今度はあの人から身を守らなければならない立場になってしまった…
それがルナには切な過ぎた。
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