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いつものように、父の遺した『ヤシカ エレクトロ35』を構える。
今日のモデルは、彼らにしよう。
緩やかな流れは、菜の花の間に入り込み、急に狭くなった通り道で小さな水の城を作り、また広い街へと流れていく。
その菜の花の森からカルガモのカップルが現れ、鈴のような音をこぼして、水面を滑り出す。
口の先に、黄色い化粧をして、オレンジのタイツをはいている。
変わった趣味の彼女を捕まえたな。
私はファインダーを覗き、二人が作った永遠の一瞬を収めた。
彼らはモデル料も取らず、水面にオレンジの影を揺らめかせながら、
二人で川を下っていった。
先週は賑わっていた川沿い並木道も、見ておこう。
車椅子のハンドリムを回し、桜並木へと向かった。
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