記憶

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結城と野間口は声をかけてきた男を眺めると、男はもう一度 『俺だよ、俺。鈴江 道生、覚えてないか?』 野間口はその男を見ながら驚きの表情で 『もちろん覚えてるよ、久しぶりだな。』 結城もその男を見ながら 『久しぶりだね。地元は大多喜だったよな。仕事か?』 鈴江 道生(38) すずえ みちお 野間口、結城達と同級生で二人とは仲が良かった。 頼んだ物が3人のテーブルに運ばれてきた。3人は箸を持ち食べ始め 鈴江は野間口と結城の言葉に 『茂原に用事があってさ、その帰りだよ。二人は?』 野間口は鈴江の質問に 『俺らもちょっと用事があって、その帰り道だよ。』 鈴江はにっこり笑って 『そっか、偶然だな。そういえば結城は警察だったよな。警察で刑事やってるって前に風の噂で聞いたよ。』 結城は笑顔で 『数年前に辞めたよ。今は便利屋を営んでる。』 鈴江は結城の言葉に 『辞めたのか、勿体ないな。』 結城は鈴江から目をそらし 『色々・・・あってな。人生色々さ。』 鈴江は結城に何があったのがわからなかったが、色々辛い事があったのだと自分なりに想像し 『そっか、38にもなれば人生色々だよな。野間口は今何を?』 野間口は食べ終わり水を飲み干し 『親が経営してる居酒屋の二代目。』 鈴江は野間口の言葉に 『店を継いだのか。みんな頑張ってるんだな。』 結城は笑って 『二代目を継ぐより、嫁さがして三代目を作る方が難しいぞ。』 野間口は結城の言葉に笑いながら 『それなんだよな~。嫁を見つける方が凄い難・・・って、うるさいよ。お前フィアンセが居るからってやかましい。そのうち見つけてやる。』 結城は笑って 『ずっと同じ事を言ってる気が。』 鈴江は野間口の言葉に驚きの表情で結城に 『結城、フィアンセいるの?凄いじゃん。相手はどんな人?』 結城は鈴江の質問に 『同級生の真田 敬子って覚えてる?』 鈴江は一瞬考えあの当時を思い出す様に 『えっ?B組のあの可愛い娘?』 野間口は結城を見ながら鈴江に 『信じられないけど、コイツにあんな可愛い娘がフィアンセだよ、まさに美女と野獣。』 鈴江は笑って 『野間口、そこまで言うとひがみにしか聞こえないぞ。』 結城も笑って 『いつも言われてる俺は勝利に打ち拉がれてる。』 野間口も笑って 『世の中間違ってるとしか思えん。冗談はさておき鈴江の仕事は?』 鈴江は野間口の質問に 『大多喜にある東西陶器に通勤してる。』
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