記憶

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結城は日本酒を飲みながら 『久々の再会にって意味でプレゼント。この御守りは財布に入れておくと良いらしいよ。』 中瀬は鞄から財布を出し 『遠慮なく頂きます。カードを入れるところに入れておくね。』 結城は中瀬が財布にしまったのを確認し 『野間口~、日本酒ほしいな。』 野間口は生ビールを飲みながら 『面倒くさいから厨房に入って自分でやってくれ。』 結城は笑って 『俺が厨房に入って良いのか?隠れて何杯か飲んでからこっちに持ってくるぞ。それでも良いんだな?』 野間口は慌てて立ち上がり 『それは困る。やっぱり俺がやる。』 中瀬は二人のやり取りに笑った。 ・・・ 太海商店街 『今日も疲れたな。遅くなっちゃったし居酒屋大将でメシ食ってこ。』 スーツ姿で勤務先の学校から帰宅途中の相川は、太海商店街の居酒屋大将に足を向けていた。 居酒屋大将の目の前に近づいた時、入り口付近に人影があった。 『なんだ、懐かしい顔じゃん。久しぶり。』 相川がそう言った瞬間、驚いて逃げる様に走り去ってしまった。 『なんだよ、逃げる事ないのに。』 ガラッ 『いらっしゃい。先生、どうぞどうぞ。今日は懐かしい女性が。』 野間口は席に案内しようとしたが相川は入り口に指をさし 『今、入り口に・・・』 ・・・ 朝8時、鴨川市南小町 ピンポーン・・・ 『ごめん下さ〜い。』 『はーい』 中から女性の声が聞こえて来た。 ガチャ 玄関が開いた瞬間、女性の顔がこわばったのを結城は見逃さなかった。 『ここじゃ、近所の目があるから車に乗ろうか?』 結城はそう言った後、顔を車の方に向け、女性は何も言わず車に向かって歩いた。 ・・・ 野間口が運転席に座り、結城はその女性と後ろの席に座り 『俺らがなぜここに来たかわかるよね。』 女性は下を向いたまま無言だった。 結城は正面を見ながら大阪に 『落ちてた免許証の名前に大阪 麻由って書いてあってさ。』 大阪 麻由(38) おおさか まゆ 結城達の同級生。学生時代は性格は暗く、自分より弱い人に陰気な嫌がらせをしていた。 今は結婚し子供が居る。 結城は正面を見ながら続けて 『単刀直入に聞くけど、山谷のアパートで何をやってた?住居侵入、はっきり言って空き巣だよ。それと昨日、野間口の店の前に居たろ。』 大阪は小さな声で 『何の事?人違いじゃないの?。最近、免許証を無くしたの。見つかって良かったわ。返して。』
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