突破口

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居酒屋大将 結城は何時になく静かに考え事をしながら飲んでいた。 野間口は厨房から結城を見ながら 『お前ね、俺の店で飲む時はもっと明るい顔して飲んでくれないかね。』 結城は日本酒を一口飲んだ後に 『いや・・・大坂はなぜ山谷のアパートに侵入して何を探してたんだ?そこから探ろうか。』 野間口は厨房で生ビールを飲みながら 『例のカードが欲しかったんだろ。しかしどうやって口を割らせるんだ?』 結城は日本酒を飲み干し 『だからカードの中身に何が入ってるのか多少でも知ってるって事だよな・・・上手く味方につければ・・・』 野間口は結城の言葉に 『だけどカードの中身は何も関係ない物が入ってる可能性だってあるし、それに大坂を味方につけるのは難しいぞ。』 結城は厨房に居る野間口にコップを差し出して 『俺らからすれば今、大坂は不利な状況にあるし、何とか味方につけられればな。山谷の件から崩せれば突破口は開けると思う。もし中身が関係ない物が入ってたなら、大坂はこの事件には関係ないって事で、消える事になる。日本酒おかわり。』 野間口は日本酒の入った一升瓶の蓋を開けて、結城が使ってるコップに日本酒を入れながら 『諸見里、山谷、森山、田山・・・で、大坂。確かに大坂を崩す方がまだ楽だよな。』 結城は野間口に注いでもらった日本酒を一口飲み 『危険をかえりみず、何もない山谷の部屋で何か探してるって事は何か握ってるのは確かだ。』 野間口は生ビール大ジョッキを飲み干して、また生ビール大ジョッキに生ビールを注ぎながら 『俺が気になるのは、諸見里の記憶喪失だな。しかも森山達の名前だけは覚えてたって都合が良すぎる。』 結城は箸を持ち大根の煮物を食べながら 『それだってもしかしたら、この事件に関係してない可能性だってあると思ったが、しかし山谷の携帯記録に名前がある限りは、何かしら関係はしてるだろうな。』 野間口は生ビール大ジョッキを一口飲み 『山谷を中心に考えるなら、田山と諸見里は山谷の携帯記録に。大坂は部屋をあさってた。』 結城は一度箸を置き 『森山事務所のメンバーは今のところ、田山繋がりでしか関係していない。この中では、関係ない可能性は五分五分。田山の留守番電話で山谷が森山によろしくとの音声だけだし。』 野間口は包丁でマグロを切って皿に盛り、それを結城の座っている前のテーブルに置き 『山谷が田山を通して、森山に何かしら用事があった。どんな用事か知りたいな。山谷の車はどこに止めてるんだろうな。今日のマグロは美味いぞ。』 結城は頭を抱え 『そうだ、忘れてたよ。車、まだ見つかってないんだった。ありがとう、頂きます。』 野間口は笑いながら 『忘れてたな。そう言えば大門って後輩には連絡したの?』 結城は野間口の言葉に 『・・・さっき連絡したら田山 洋子の足取りは調べて確認してあるとの事だ。』 野間口は笑って 『この話しは今日は終わりにして飲むぞ。そのマグロ食え。マジ美味いから。』
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