点と線

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鴨川市江見のレンタカー屋 結城は腕に鴨川警察署捜査一課若手教育係の腕章をはめレンタカー屋の出入口ドアを開けて、鞄からシルバーのワゴン車の写真を取り出して店員の前のテーブルに置き 『スミマセン、お伺いしたいのですが・・・シルバーのワゴン車ってここのお店にはありますか?探してまして。』 店員は結城が目の前のテーブルに置いた写真を手に取り見ながら 『警察の方ですか?この色のワゴン車は、うちにはないですね。ただ、うちのレンタカー屋はチェーン店なんで確認を取るので少々お待ち下さい。』 結城は店員の言葉に 『すみません、よろしくお願いします・・・』 中瀬は結城の耳元で小声で 『見つかるといいね。』 結城も中瀬の耳元で小声で 『簡単に見つかれば良いんだけどね。』 暫くして店員が戻って来た。 『お待たせしてすみません、うちのチェーン店には置いてないですね。』 結城は店員の言葉に 『調べて頂きありがとうございます。あの、他のレンタカー屋で置いてあるお店ってご存知ないでしょうか?』 店員は一瞬間を置き 『どうなんでしょう………すみません、今店長を呼んで来ます。』 店員は裏の部屋に行き店長を呼んできた。店長はパソコンを動かし 『この車種はこの辺では見ないですね。もしあるならもう少し都会の方。』 結城は店長が調べてくれた結果に 『例えば、君津市とか木更津市ですか。』 店長はパソコンの画像を見ながら 『後は館山市とか。館山市で2件ヒットしました。茂原市で1件。住所と電話番号とお店を教えます。』 結城は鞄から手帳を取り出しメモをしながら 『すみません、ありがとうございます。館山市と茂原市か・・・全く正反対だな。』 中瀬は結城を見ながら 『結城君の運にお任せだね。』 結城は中瀬の言葉に笑って 『俺に運を任せたら大変な事になるぞ。近場から行こうか。』 中瀬は結城を見て 『近場からって、館山市から行くのね。』 二人は車に乗り込み、館山市にハンドルを向けた。 結城はカーナビの結果を見て 『片方は館山駅の近くだな。そこから行こうか。』 中瀬もカーナビを見ながら 『館山市は何年も行ってないや。』 結城は運転しながら 『最近は仕事でしか来ないよ。城山公園の館山城からの風景は最高だよ。山になってて、町や海が一望出来る場所でさ。』 中瀬は結城を見ながら 『結城君、事件が落ち着いたら連れてってほしいな~。』 結城は笑いながら 『一人で行って来い。』 中瀬も笑いながら 『女が一人で山の上で景色を眺めるって、何か訳有りにしか見えないじゃん。』 結城は中瀬の言葉に笑って 『傷心の旅か。それなら中瀬さんは雪の日本海が一番似合ってるよ。雪が津々と降ってる日本海を眺めてる・・・似合ってるよ。』 中瀬は結城の言葉に笑って 『それ、ただの演歌の世界じゃん。なら私は天城越えやさざんかの宿みたいな事、結城君とやってやるわ。』 結城はペットボトルのコーヒーを飲みながら 『歌の内容詳しいじゃん。』 中瀬は笑って 『これが女の情念よ。』 結城はペットボトルのコーヒーをドリンクホルダーに置き 『中瀬佳純の情念か。』
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