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彼女は涼に、街に起きている異変についての話を聞く事が出来た。
連続している猟奇殺人事件は、昨夜に自身を襲ったものと同一、または類似した存在によるもので間違いはないようだ。
そして涼が休んでいる間、彼女が数体の悪魔を撃破したものの、それで事態が好転する兆しなどはなく、焼け石に水といった状況らしい。
「よく分かったって言いたいけど、サッパリ分からねぇ……」
「これまでの貴方からすれば、確かに非現実的なことばかりでしょう。しかしこれは、紛れも無い現実なのです」
「否定のしようが無いもんな。エリミラは今この場にいるし、ゾンビ女はお前が斬った。部屋は散らかってるし、俺はといえば回復力がビックリ人間だ」
涼は頭を抱えて低く唸る。
考えるべき事が一気に増え、頭が熱暴走寸前なのだろう。
「……ところでエリミラ。お前もしかして、その格好で外に行ったのか?」
「ええ、勿論です」
「……だよな。だよな!そうだよな!返り血浴びちゃってるもんな!」
涼の取り乱し様に、エリミラは不安げな表情を浮かべる。
自分は何をしてしまったのだろうと、困惑する。
「今の世の中、鎧着て剣持った女がフラフラしてたら、即警察沙汰なんだ!しかも血塗れときてる!機動隊やら戦闘ヘリが出てきても不思議じゃない!」
機動隊はともかく、戦闘ヘリなどどこから来るというのだろうか。
「ご心配なく。姿は誰にも――」
「見られなかったら良いってモンじゃねェの!次に同じことをして、もしサツに見つかってみろ。お前は吸血鬼だから良いかもしれないが、俺は間違いなくしょっぴかれるぞ!」
知り合いというだけで涼が逮捕されることはないだろうが、逮捕されたエリミラが主だなんだと証言すれば可能性はある。
もっとも、エリミラ自身が警察組織に捕まえられるのかは怪しいところだが。
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