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「そこまで考えが至らず……。大変、申し訳ありませんでした」
エリミラは頭を下げ、謝罪の意を示す。
「……いいよ、もう。次からは気をつけてくれよな。……待った、お前服って持ってんの?」
「いえ、ありません。鎧の下には勿論着ていますが、これ以外は……」
涼は頭を悩ませる。
彼女の甲冑は、全身を鉄の塊で多い尽くす典型的なものとは異なっている。
隙間もそれなりに多く、下半身はスカートに防具を貼り付けたような形状だ。
それら全てを外したとしても、彼女の姿は目立つ。
ゴシック調の服だと言えば確かに不思議はないと思えるのだが、目立つことには変わりがない。
「……仕方がない。イヤじゃなければ……その、アレだ。俺の服、着てろ」
考え付く中での最善、尚且つ苦肉の策だった。
女性に服を貸したことなど初めてで、なんとも言えない気恥ずかしさを感じる。
それ以前に、女性に着せて違和感の無い服などあったかどうかも怪しいのだが。
「よろしいのですか?私などがお借りしても……」
「いいよ、別に。しばらく外に居るから、気に入ったの探して、そんで着て、終わったら呼んでくれ」
「分かりました。では、しばらくお時間をいただきます」
涼は外に出て、深呼吸をする。
実に、気持ちの良い朝だ。
これで街に悪魔が蔓延っておらず、日常を謳歌できる環境であればどれだけ良かったことか。
「……そういえば、学校行かなきゃ」
今日は大学の講義がある。
今から準備をすれば余裕を持って辿り着くだろう。
「……知らねぇや、バカヤロウ」
だが、彼はサボることを決心した。
幸い、出席日数は十分に足りている。
いま一つ、心が落ち着いていない。
であれば、ここは欠席して、心の整理をつけ、エリミラとの付き合いを考え、それらが落ち着いてから出席する。
それが、彼の考えた最善策だった。
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