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最初の目的地は、涼が発見した現場だ。
無論、パニックを起こした涼ではなく、全く別の二人目の目撃者が通報していたわけだが。
案の定、警察官だらけで調査など出来るはずもない。
「こりゃ無理だな。帰るか?次に行くか?」
「無理?そんなことはありません。むしろ、これは好都合です」
「……なんですって?」
エリミラは現場に近付いていく。
それに気付いた警察官が彼女を止めようとする。
「ここは立ち入り禁止です。あまり近付かないでください」
「何を言っている?私は警察官だ」
「あまり変なことを……」
エリミラは、警察官の目をじっと見つめる。
ただただ、彼の眼を見つめる。
「失礼致しました。どうぞ、中にお入りください」
警察官は、彼女を規制線の中へと入れてしまった。
慌てて止めようとする者が何人かいたが、いずれもエリミラに見つめられると、その態度を改めた。
「これまでの調査の結果は?」
「被害者は小島英明、職業はフリーターです。容疑者については、まだなんとも」
エリミラは尋ねはしたものの、それほど真剣には聞いていない。
被害者の個人情報など、彼女の成そうとしていることにはそれほど関係がないし、加害者は既に斬った。
加害者が加害者となった経緯は知りたいところだが、彼らの捜査でそれが判明することはないだろう、少なくともこの場では。
「遺体は?」
「こちらです。酷いことになっていますが……」
ブルーシートに包まれた被害者の遺体は、首が切断されているだけではなかった。
後頭部は抉られたようになっており、両肩も骨が見えるまで食い千切られている。
首も切断されたというよりは、噛み千切り続けた結果そうなった、という印象だ。
「損壊が激しすぎて、悪魔も依代に出来なかったようですね」
「どうかされましたか?」
「何でもありません。……貴方の仇は討ちました。安らかにお眠りなさい」
訝しげな表情を浮かべる警察官を無視し、エリミラは遺体に祈りを捧げ、その場を立ち去った。
悪魔がそこにいたというのは感じ取れたが、具体的にどこからやってきて、どのように行動したかまでを辿るには至らなかった。
「お前、スゲーんだな」
「吸血鬼の基本技能です。さぁ、次です」
この場での調査で得られたものは多くはない。
次の場所へと二人は急いだ。
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