闇は貴方の傍らに

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両断された死体はピクリとすら動くことはなく、その場に黙して崩れ落ち、血の海へと沈んでいく。 美しさすら感じる戦いの前に、血生臭さなどの不快感は一切感じていなかった。 「助かった……ってことでいいんだよな……?」 窓は割られ、傷を負い、目の前には謎めいた女騎士と真っ二つの死体。 逃げ出したいのは山々だが、それを出来るほどの元気など残っていない。 「敵の沈黙、死亡を確認。……もう大丈夫です」 剣を闇に戻すかのようにして消失させ、彼女は静かに跪く。 誠実さと気品を感じさせるその動きに、またしても涼は魅了されていた。 「私の名は、エリミラ。召喚の儀式に応じ、この世に再び命を授かった吸血鬼です。これより先は、あなたの剣として生きることを誓いましょう」 現代に、吸血鬼。 現代に、召喚の儀式。 辺りを見渡してもここは自室、転がる死体は現代人の女、決して異世界に迷い込んでいるわけではない。 むしろソレは、エリミラと名乗った彼女に言えることだ。 「エリミラ、か。よくわかんねぇことばっかだけど、助けてくれてありがとな」 「いえ、これが私の役目で――」 突如、彼女の体がぐらりと揺れ、倒れる寸前となる。 涼が咄嗟に支えなければ、床に頭を打ち付けていたかもしれない。 「どうしたんだよ!だ、大丈夫か?」 目の前の彼女は、とても剣を振り回せるようには思えない。 騎士と言うよりは、病弱な小娘の方が表現としては相応しいだろう。 「……時間がありません。あなたの言動、行動から契約の意思有りと見なし、契約をさせていただきます」 彼女は涼の首筋に顔を近づけ、囁いた。 「どうか、身動きなさらぬよう。痛みを伴いますが、すぐ、済みますので」 その言葉に応える前に、彼女は首筋に牙を突き立てた。 痛みと、牙へと流れ込む血液の流れを、涼は感じていた。 「んっ……く……んぅ……」 官能的な声をあげながら、彼女は血を啜る。 頬も僅かに紅潮している。 しかし、涼にそれを気にする余裕はない。 猛烈な痛みに耐えるので精一杯だ。 吸血される側は強い快楽を感じると何処かの文献で見た覚えがあるのだが、誰がどう見てもこれでは全く逆の状態であった。
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