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背広は何も聞いていなかった。
ただ同じ質問を繰り返して、そして、卓が答えるたびに鞭でめった打ちにした。
「痛い。痛い。痛いよぉ……ごめんなさい。ごめんなさい。僕が悪かったんです。ごめんなさい。……痛い。助けて。誰か、助けて……」
男は、ふと手を止めると、卓の耳元に顔を寄せ、そしてつぶやいた。
「いいか……お前はまだ子供だ。仲間のことをしゃべったとしても、誰もお前のことを責めたりはしない。俺がこれまで痛めつけたアカの中で、二日と耐えられた奴はいない。お前がすぐにしゃべっても、誰もが当然のことだと思うだろう。それに、お前は名も割れていないだろうから、お前が捕らえられたということすら、知れ渡っていないだろう。つまり、お前は、竹内のヤサをうたったあと、何喰わぬ顔で工場に戻ればいい。……さあ、改めて訊こう。竹内は、今、どこにいる?」
「ごめんなさい。本当に、本当に知らないんです。僕、竹内さんのことがすごく好きだったし、勉強会以外の日でも会えることなら会いたかったんだけど、でも、僕、竹内さんの家、知らなかったし……」
「そうか……あくまでも、白を切るなら、仕方がないな」
そう言うと、男は、火鉢に突っ込んであった火箸を取り出した。
金属製のそれの先端は、真っ赤に燃えて、炎が揺らめいていた。
「いやぁああああっ、やめて。お願いです。やめてください」
「仕方がないな」
男は、火箸の先を卓の裸の背中に押しつけた。
「ぎゃあああああああっっつ……!」
卓の背中が燃える。
肉の焼ける臭いが漂い、煙が背中から吹き起こる。
「ぎゃあああああっ、痛い、痛い、やめてぇ……。痛い。痛い。痛い。ごめんなさい。ごめんなさい。許してください。痛い……痛いよぉ……」
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