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卓は教本から顔を上げた。
こんな時間に誰だろう?
ふと、卓は、そのノックの音が竹内さんなのではないかと思った。こんな時間に竹内さんが来るはずはないし、そもそも来る理由もない。勉強会は、水曜日だし、まだ、教材をもらったぱかりだ。
でも、もしかしたら……
卓は期待を胸に、静かにドアを開けた。
竹内さんではなかった。
背広が二人、そこには立っていた。
背の低い方の背広が、小さな声で言った。
「竹内はどこにいる?」
「えっ?」
「竹内だ。竹内結城。ここにはいないのか?」
卓が答える間もなく男たちはずかずかと部屋に入り込んできた。そして、押し入れを開け、布団の隅々まで誰か隠れていないかを調べ、誰もいないとわかると卓の方をキッとにらみつけた。
卓は怖かった。
何を言えばいいのかわからなかった。
消え入りそうな声で、卓はつぶやいた。
「あの……竹内さんは、ここにはいません」
すると、短身の背広が卓の手をつかみ、そして、その恐ろしげな顔を卓の顔に近寄せ、食いつくような勢いで叫んだ。
「いないのはわかってる。竹内はどこにいるんだ?」
「し……知りません。竹内さんなら、竹内さんの家に……」
いきなり、卓はつかまれていた腕を強く引っ張られ、そのまま壁へと振り飛ばされた。
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