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卓が連れて行かれた場所は、円タクで十五分ほどのところだった。
車の中、卓は両脇を背広に抱えられたままで、身動きどころか言葉すら発することができなかった。
途中、『僕はどこに連れて行かれるんですか? 警察に?』と恐る恐る問いかけてみたが、二人からの返事はなかった。
やがて着いたその建物の一際奥まった一室に、卓は放り込まれた。
そこは、机と椅子、竹刀、鎖、バケツなどが置いてあるだけで、あとは妙にがらんとした部屋であった。窓はなく、電灯を消してしまうと昼でも真っ暗だろう。
床に黒々としたシミが広がっている。
卓が何の跡だろうと思って見つめていると、長身の背広が後ろ手に扉を閉めながら、言った。
「それは、血の跡だ。いくら洗ってもなかなか消えない」
卓はふるえた。
「さて、始めるか。服を脱げ」
「えっ?」
「服を全部脱ぐんだ。もちろん、お前がすぐに素直に話すんなら、何も問題ないが、シュギシャというのは、なかなか口を割らないもんだからな。配給品の服を傷めては、不敬に当たるというものだ。さあ、脱げ」
卓が躊躇していると、長身はいきなり、激しく卓の頬を殴った。
「痛い!」
「脱げと言ってるだろう。脱げ!」
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