1.金のネックレス

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といったところでそろそろここを出る方法を考えよう。 なんせここにはもう10分もいるのだ。 10分ときくと大したことなさそうに思えるが、それは例えばベッドに横になっている時とかの話で、得体の知れない、しかもあり得ないような場所にいる ところで過ごす10分には全く適用されない。 その10分は私には5時間くらいには感じられた。 まず辺りを見渡してみる。 するとちょうど私の真後ろあたりに何か小さな穴を見つけた。 それはこの下品な光の世界でやけに目立っていた。 真っ黒で、凄く強い力を感じた。 私は小さい頃に見た蟻の巣穴を思い出した。 その巣穴は穴の中が真っ黒で、終わりがなさそうに見えた。私は小さい頃、色んな穴を見るたびに、きっとこの世にある色んな穴は地中で1つにつながっていて、そこには大きな地下帝国があるんだと思っていた。そしてその蟻の巣穴もそこに繋がっているんだろうと思った。 まあ、当然ながらそんな地下帝国などなかったが。 私はその残酷な事実を蟻の巣穴を見つけたその日に知ることになった。 夜、テレビを見ているとちょうど蟻の生態について特集が組まれていた。 なぜ蟻なんかの生態について特集を組もうと思ったのかは分からない。 私はちょうど蟻の巣穴を見たこともあって、すぐに食いついた。 そして蟻の生き様が人間によって赤裸々に暴かれていった。一体人間になんの権限があって蟻の歴史を暴くのか、私は今になってそう思う。 しかし小さい頃の私はそんなこと微塵も考えずに、早く巣穴のことについて言わないかといらいらしながら待っていた。 そして巣穴について触れた。 内容は覚えていないので割愛するが、それはとにかく私を落胆させた。こうして人は大人になっていくのだろうが、私の悲しみはそらはもう深かった。 そして残酷で冷酷な真実は私を2日ほど寝こませた。
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