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「ふざけんなっ、こらぁっ!」
男2人に女1人。
夜の人だかりの中心で拳を振り上げ暴言を吐く。
「きゃあっ!」
可愛い怯えた悲鳴を上げて顔を被う女を背に、アタシは迫る拳を軽く叩いて避け、伸ばした腕を曲げ、突っ込んでくる顔面に肘をぶち当てる。
ゴキッ!という不快な音が鳴り、男が顔面を押さえて後退り、自分の足を縺れさせて転がった。
不様だ。〈ふんっ〉と鼻を鳴らして余裕を見せると、もう一人が熱り立ってパンツのポケットから危ない代物を取り出してきた。
「おいおい……」
「……ざけんなよ、女だと思って加減してりゃ調子こいてんじゃねぇぞ!」
ふざけてなんかないよ?
加減なんかしてる様子ないじゃん。
強引な誘いにやんわりと断りを入れてたはずだよ?
引かないお前らが悪いんじゃね?
それに……
「あんたの腕よりアタシの足の方が長いんだけど」
護身用か?と思われる小振りのナイフ片手に襲いかかる相手に、
「きゃーっ!棗ーっ?!」
と後ろの人混みに紛れる友人が喚くが、アタシの長~い足が振り回されて男の横っ面にめり込んだ。
左側頭部から脳を揺らしたが、軽い脳震盪くらいだろ。安心しろ、救急患者を受け入れてくれる病院は近くにあるよ。
呻く男と気絶した男を見下ろしていると、騒ぐ人だかりの中から友人が駆け寄ってきた。
「棗、棗!大丈夫?!」
「平気だよ。爽子こそ大丈夫?」
「うん、うん、怖かった~」
半べそかいて赤い顔で目を潤ませ見上げてくる友人・爽子が可愛くて頭を撫でてあげる。
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