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「やったわ!」
……はい?
再びはっきりと聞こえた言葉に疑問符が立ち並んだ。
今、確かに爽子は『やったわ』と言った。
聞き間違いじゃないよね?
現に爽子は頬を染めて喜びの表情でガッツポーズまでして跳ねていた。
「そ、爽子?」
「やったわー!願いが叶った!!
ありがとう!お月様!これで棗と結婚出来るわ!!」
「え?何?……爽子さん?」
「棗、直ぐに婚姻届け出しましょ!他の女共に見付かる前によ!早く!今直ぐ!」
興奮して息巻く爽子に呆気にとられ、茫然とするアタシの腕を掴み、爽子は玄関に引き返す。
「ちょ、ちょっと待って爽子?」
訳が判らず戸惑い続けるアタシに、爽子は愛らしい瞳を爛々と輝かせて骨太な手を柔らかな両手で握った。
「私、毎晩願っていたの!棗が男になりますよーにって!願い続けると叶うって本当なのね!嬉しい!棗、大好きよ!結婚しましょ!」
はあっ?!
「あんたの所為かっ?!」
驚きと困惑を入り混ぜて悲鳴染みた声を吐き出すが、当の本人は歓喜の真っ只中でアタシの言葉なんぞ耳に入らず……
「棗も私の事好きだって言ってくれるでしょ!
あ~なんて素敵なの!そこら辺の男よりずっとずっと何倍も素敵よ、棗!」
テンション上げまくって爽子はアタシに抱き付き頬にキスまでかましてくる。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……
「ま、待て待て待て!アタシは……」
「なーつーめ~!」
いや、イヤ、嫌!
「アタシはノーマルだぁぁぁぁぁぁっ!!」
押し倒されながらアタシは必死で叫んだ。
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