棗さんの受難

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はっ!!として瞼を開くとそこには見慣れた天井があった。 ちゃんと布団の中で、アタシはパジャマ代わりのTシャツにびっしょりと汗を掻いて寝転んでいた。 勢いよく飛び起き自分の体を確めると……ちゃんとあった。 小さいながらも柔らかな膨らみが2つ、手に収まってムニムニと……オマタも女のままで感動して涙が滲む。 「はあ~……夢か」 と安堵の息を吐くとスマホから爽子に設定してあるメロディが流れてきた。 ビクッ!となりつつも手にとり「……おはよ」と声を発すると、爽子は 「棗?!今から行くわ!」 と勢い付いてそれだけ言うとブッつりと切られる。 何事かと怪訝に思ったが、数分後、爽子は全身で息を吐きながらアタシの部屋にずんずんと押し入ってきた。 「爽子、どうしたの?」 その慌てっぷりに何かあったのかと心配になる。 が、爽子は愛らしい大きな目をキッ!と吊り上げてアタシの手(逞しくもないが女らしくもない長くて細いだけの手)を両手で握り、アタシを真っ直ぐに見詰めてきた。 「棗、女同士でも結婚出来るって知ってた?! 私達、結婚出来るのよ!」 「はい?」 何を言い出したのかと目を丸くするアタシに爽子は至って真剣に告げる。 「棗、結婚しましょ!そこら辺の男より断然棗の方がカッコいいもの、私、棗となら何だって出来るわ!私、棗を愛してるわ!」 「はいぃぃぃぃぃっ?!」 爽子は真っ赤になって捲し立て、たじろぐアタシに飛び付き、フローリングに押し倒す……デジャヴ……後頭部に痛みを感じた。 誰だ、爽子に教えたのは?! ……お願いです。 夢だと言ってください! 「アタシはノーマルだぁぁぁぁぁぁっ!!」 アタシの叫びは虚しく木霊する──── ~fin~
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