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「あなたは...」
夢であってほしかった記憶が巡り思い出される。
そして今も彼の瞳は妖しく金色に輝いていた。
「貴方は、誰なの?私をどうするの?」
一歩、また一歩と彼は近づいてくる。
その間金縛りにあったように体が動かず、金色の瞳から目を反らせなかった。
そんな私を見て、彼は優しく目を細める。
ひんやりとした指が優しく私の頬を撫でた。
「....分かりやすく言うと、蛇の妖です。そして僕は、今夜貴女を花嫁に迎える。」
頬を撫でた指は私の唇にきて止まる。
『この人は危険だ』
私の中でそう何かが告げている。
「妖なんて、いるはずない...」
「目の前の僕を見ても? 」
楽しそうに笑う彼の口から2つに別れた舌が見える。
そして鋭い牙も...
「そんなに見つめられると、我慢できなくなりますよ?」
ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。
そしてぺろりと唇を舐められ、微かに開いた隙間から舌がねじ込まれる。
「い、や....う...」
舌が長い舌に絡みとられ、思わず涙を溢してしまう。
「ふ...かーわい。そのまま"動かないで"?」
まるで言葉に縛られたように、体が動かない。
怖くて怖くて、苦しいくらいに心臓が暴れる。
そんな私を楽しむように、ゆっくりと彼の唇は、私の左胸へと位置を変え口づけた。
「この者を、我が妻に...」
――チクリ
嘘...噛んだ?!
その瞬間、ぶわりと体中が熱くなる。
「何、これ...」
「僕の毒ですよ。このままだとあと数分ももたない。」
もたないってまさか...!
血の気が引く感覚と酔いがまわるような感覚。
その2つが私の中をぐるぐると回る。ホントに私...死ぬってこと?
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