私の復讐

　うちに来た男は、この一、二ヶ月、謎の体調不良で寝不足だと周りに言っていたらしい。しかも時折、妹が夢に出てくるとまで口走ったそうだ。
　普段の男の態度から、周囲は、男は妹のことが好きで、死のショックで心が弱っていると思ったようだが、あの男がストーカーだと確信し私は別のことを考えていた。
　もしかしたら、私が、ストーカー男の写真のコピーにしていることは、現実にあの男を苦しめているのではないだろうか。
　ただの罪の意識なら、妹が死んだ直後から不具合が出る筈だ。なのに今になって体調不良を訴えるようになり、しかも、妹に謝罪をしに来た。それはあの男が、自分のせいで妹が死んだから、呪われていると感じているせいなのではないだろうか。
　考えすぎかもしれない。でも私は自分の考えを信じ、よりいっそう、写真のコピーを痛めつける方法を苛烈なものにした。
　それからおよそ一ヶ月。あの男がストーカー行為を自白し、警察に駆け込んだという報告を妹の友達から聞いた。
　入学と同時に妹に一目惚れをしたが、異性としては相手にされず、ストーカー行為に及んだのだとか。
　それを告白した以上、あの男は社会的には抹殺されるだろう。けれど妹の死は自殺だ。警察に駆け込んだところでそこまでの罪には問われない。むしろ自首で罪は軽くなり、男自身も、総てを打ち明けたのだからという気持ちになって良心の呵責を和らげるだろう。
　そんなこと、絶対に許さない。
　妹は優しい子だったから、罪を認めればあの男を許すかもしれないけれど、私は決して許さないよ。
　この先も、ずっとずっと写真のコピーに加虐し続ける。切り刻み、刺し貫き、焼いて潰して踏みにじり、とことんまで酷いことを続けるよ。
　別に、コピーした写真に酷い真似をするだけ。妹に自殺された姉がストーカーと思しき相手の映像をそう扱ったっても、それは仕方のないことでしょう？
　これからも私はあの男の映像を蝕み続ける。幸いにも素性が知れたから、妹の遺品から他の写真も探し出して散々な目に遭わせてあげるね。
　私、心が病んじゃってるの。だからおかしなことしちゃってもしょうがないよね。
　あの男の不調が世卓志の思う通りなら、いつか妹の友達があの男が死んだと言ってくるまで、ずっとずっとありとあらゆる映像をめちゃくちゃにしてあげる。
　これが私の、法には一切触れない復讐。

私の復讐…完