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ステンレスボトル
菜奈が自宅へ帰って、ミチルのあたたかなぬくもりを思い出していたとき。
ミチルの家では机に置かれた、あのステンレスボトルが光を放ちはじめた。
おびえた顔をしてミチルがその光をじっと見つめていると、光のなかから声が聞こえてきた。
「ケン・ソドム。
君は今日、古代人の女性に光の秘密をしゃべったな?…これは重要な規定違反だ。
この前もその女性とタイムトラベルをおこなったが、それも規定違反だ。古代人に我々の時代の情報をしゃべったり我々の技術を見せてはならない。
あまり調子にのると、どうなるかわかっているな?」
そういうと光のなかの声は聞こえなくなり、光も消えた。
後にはステンレスボトルがぽつんと残されていたが、それには不気味な威圧感があった。
菜奈とミチルはそれからも交互に「相対性理論」を読み、互いのしおりにメッセージを書きこんだ。
「この公式どう思う?」とか、「どこそこのお好み焼きおいしいよ」とか。お好み焼き屋には二人で食べにいって、感想を言い合ったりした。
「なにチンタラやってんだよ。メールすりゃあいいじゃん。」と言われるかもしれないが、メールやラインでは伝わらないことがあると思う。
手紙じゃなければ伝わらないこともあるし、しおりでなければ伝わらないことだってあるのだ。
菜奈の白いしおりはミチルからのメッセージでいっぱいになり、ミチルの水色のしおりはせなからのメッセージでいっぱいになった。
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