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「そうかな?あたしは一瞬で着いたほうがいいと思うけどなあ。」
「菜奈も体験したらわかるよ。」
ミチルが静かに言った。
「どうやったら体験できるのよ?」
と、菜奈が聞いたが、ミチルは少し笑顔を浮かべただけだった。
近鉄の奈良駅を下りると、二人は東大寺へと向かう坂道を歩いていった。
東大寺でも、ミチルはとても詳しくじっくりと建物を見つめていた。大仏も背中にまでまわって、しっかりと見た。
興福寺の阿修羅像も新薬師寺の十二神将像もじっくりと見た。
二人が気がつくと、もう西へと日が傾きかけ、寺は閉まりはじめている。
ミチルは、
「今日はここまでだね。菜奈、どこか眺めのいいところに行かない?」
と、言った。
二人は若草山に登ることにした。
若草山はあまり高い山ではないが、その西側の斜面が広く芝地になっており、そこから奈良の市街が一望できる。散歩気分で登ることができるので、市民の憩いの場になっている。
二人は憩う人たちの間に腰を下ろした。
ちょうど西日がさしてきて、、興福寺の五重塔やいくつもの寺、大きな樹々が逆光のなかに浮かび上がり、影絵のように幻想的な風景を見ることができた。
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