第3章:cherry blossom

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「……んで?お前たちさ、その後あのピアニストとはどうなの?」 駅前のお好み焼き店。 店のチョイスは奏だった。 「せっかくだから、がっつりお腹いっぱい食べる!!」 そんな奏の閃きが、このお好み焼き店だったのだ。 「響さん?……洋司、いま、その話はしないで。……会いたくなる。」 奏がテーブルに突っ伏す。 「おい石神、こいつ……何かあったのか?」 奏の反応から、そんなに深刻なものではないのだろうと判断し、うたに訊ねる。 「奏ちゃんね、我慢できずに会いに行ったの、ドイツまで。そうしたらね、響さん、すれ違いで日本公演に来ちゃったの!……私は会えたんだけど、奏ちゃんは……」 気まずそうに奏を見遣るうた。 「お待たせしましたー!」 注文していたお好み焼きのタネが…… 「……誰が6枚分も頼んだ!!」 「……うっさいわね~。うた、焼いて~」 「はーい!……豚玉から焼くよ~」 丼ぶり6個のうち、ひとつを手に取り、手際よく焼いていくうた。 「二宮も、普通に待ってればすれ違わずに済んだんじゃね?」 洋司は笑いながら奏に言う。 「……いつ来るかなんて分かるか!!」 「そんなの、交響楽団のサイト、お気に入りに入れとけば一発じゃねぇか。公演情報とかもあるんだろ?」 「……あ」 「……そうか」 うたと奏が、揃って声を上げる。 「おいおい……そのくらいチェックしとけよ……」 ふたりのリアクションに、呆れ顔の洋司。 「もーいい!!食べる!!」 「はーい、出来たよ~、じゃ、奏ちゃんは大き目ね。」 奏が「食べる!」といったタイミングで、うたがお好み焼きを奏にとりわけ、次いで洋司に取り分ける。 「はい島田くん、熱いから気を付けてね。」 そんなうたと奏を交互に見遣る洋司。 「二宮……このままだとお前、石神に負けるぞ?手際と言い気配りと言い……完璧じゃないか。」 そんな洋司の言葉を、突っ伏したまま聞く奏。 「そーんなの、響さんだって知ってるわよ。でも無理。料理と癒し系だけは絶対にうたにはかなわない。」 ……すでに、勝負すらしていなかったようだ。 「私は、奏ちゃんのカリスマ性とか、物怖じしないところとか決断力とかは勝てないな~」 うたも、奏の長所を述べる。 洋司は、その時思った。 (きっと、お互い真逆のタイプだから、かえってうまくいくのかも知れないな……」
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