第3章:cherry blossom

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「お腹いっぱ~い……」 「私、もう無理だわ……」 「ってか、6個とかバカか……」 1時間後。 座敷にて満腹で苦しむ3人。 「6,800円になりまーす♪」 レジでの精算。 洋司のおごりだと言っていたので、財布を持って先頭に立ったのだが…… 「……3人の会計じゃねぇ……」 呆れ顔で精算を済ませる。 「ごちそうさま~♪」 「なんか……ごめんね島田くん……」 腹をさすりながら満足げな奏と、申し訳なさそうに洋司の横で頭を下げるうた。 「……んで?結局お前ら、何に焦ってるんだ?」 大きく溜め息を吐いてから。 洋司は練習の時から感じていた疑問をうたにぶつける。 「……え?」 うたが、はっと目を見開いた。 「練習の時から、演奏も歌も走りっぱなし。でもやめようともしない。そして最終的にはやけ食いだろ?……まぁ、やけ食いはともかく、俺だって演奏者だ。毎日聴いている音楽が違えば、気づくさ。」 珍しく語る洋司に、うたは照れ笑いを浮かべる。 「島田くん、やっばり凄い人なんだね。……ご明察。」 奏は、さっさと前を歩いている。 「ねー見て!星がこんな街中でも見えるよー!」 明るくこちらを見て笑う奏を見て、うたも優しい笑顔で手を振り応える。 「同い年のね、天才演奏家がいてね。その人は、響さんと対等に肩を並べててね。異性としても魅力的でね……。」 打ち明ける度に、うたの胸が痛む。 自分は劣っている。 そう認めて口に出すことが、辛かった。 「だから、早くあの位置まで行きたくて……響さんと肩を並べたくて。」 次第に、言葉から力が抜けていく。 「私たちの事も……見て、欲しくて。」 うつむき、目に涙を溜めた。 洋司はそんなうたの話を黙って聞いていたが、うたが泣きそうなのを見ると、 「……だから、何だよ。」 と、笑いながら言う。 「…………え?」 「もともと、その響ってのは、何しにドイツへ行ったんだ?お前達に愛想をつかしてか?」 やれやれ……と空を見ながら言う洋司。 「お前達に何て言ったかは知らねぇが……お前が再会して、とっくに見捨てられてるなら、今後もへったくれも無いだろ。お前が並びたいと感じているなら、そいつは『変わらないでいる』からなんじゃねーの?」 再び、洋司が語る。 響とは面識の無い、洋司の言葉。 しかし、その言葉には力が込められていて………… 何より、説得力に溢れていた。
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