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「そう……だよね。うん、私たち……本当に焦ってたんだね。」
何か、吹っ切れたよな気がしたうた。
「ありがとう島田くん。……やらなきゃいけないこと、ちゃんとわかったよ。まずは、響さんに相応しい、対等なところまで行くこと。見てもらうには、ちゃんと見えるところにいないとね。」
そう言って、洋司に微笑むうた。
「お前さ……どうしても響って男がいいのか?お前なら、何処へ行ってもいい男、必ず見つかるぞ?」
それは、洋司の素直で率直な意見だった。
「性格も穏やか、気が利くし料理も出来るんだろ?歌が凄くて……容姿も、悪くない」
どうしてこれまで同級生たちは、うたの魅力に気付かなかったのだろう?
……そう、洋司は思った。
(まぁ……気づいていなかったのは俺も同じか。)
「ありがと。これは自信のつくお世辞としてありがたく受け取っておくね。でも……私の親友が、完璧だからね。油断はできないよ~」
そういって、うたが視線を送る先。
「ねー!!ふたりでなにのんびり歩いてるの~?……お邪魔ならひとりで帰るよ?」
立ち止まればふたりが近づくのに、それでも先を歩く、奏。
「私の側には、いつだって太陽みたいな奏ちゃんが居るの。大好きな奏ちゃんが居るのよ。奏ちゃんがあんな風に歩き続けるなら、私だって止まらない。だって……」
いまいくよ、と奏に手を振って。洋司を見つめ……。
「……立ち止まったら、あっという間に見えないところまで行っちゃう。それが、奏ちゃんなんだよ。」
(そして……響さんなんだよ。)
奏を見ていると、元気を分けてもらえるよう。
響を見ていると、優しい気持ちになれる。
だが、ふたりが並んでいる姿を見ていると……
……たまらなく、胸が痛くなる。
「奏ちゃん、お待たせ!……あれ??髪に揚げ玉……ふふっ♪」
「えーー!?恥ずかしい!マジ恥ずかしすぎる!!うた、取って~!」
奏の長く美しい髪に手を伸ばし。
「もう、奏ちゃん……二十歳なんだから、気を付けて、ね?」
奏と並んでいる自分は、いつもどんな気持ちでいただろう、そう考えていた。
「……ありがと、うた。ん~、出来るだけ大ざっぱな外食の時は、うたと出かけることにする~!」
太陽のように眩しい笑顔を向けられ、うたは確信した。
(気持ち……とかいう問題じゃないね。私は、ただ奏ちゃんが大好きなんだ。)
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