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土曜は夜更かししてもマツコは出ないとわかりつつ、それでもチャンネルを回してしまうのはどこかにあの図体のデカいおばちゃん(あれ、おじさんなの?)の姿を探しているから。
高校に行かなくなってから一か月たったのに、クラスの人間はだれも見舞いは来ないわ、担任は来たら来たで「いじめられてるのか」っておいおい。いじめに命の危険を感じたから学校行かないんだろうが。
靴に画びょうとか目に見えてわかるからいいけどトイレの個室入ってたらバケツで水流すのは無いわ。汚水じゃないからよかったけれども。窒息死の危険も考えると転校も視野に入れたにはいいけれど、親は「いじめで人は死なない」って他人事すぎるんだよバカ! この前暴行されて死んじゃった人のニュースやってたじゃんか! この両親テレビ見てねえんだよ! だからこんな傍から阿呆なことしか言えないんだ。そんなんだから娘がテレビしか信用できないんだって。現実に精神ばきばきに崩されて、画面の向こうの、言うことちゃんと言うコメンテーターに心を動かされるんだ。
自室の小さなテレビだけが私の世界。スマホ? 何それ持ってないし。ネットなんかどうせ文句言いたいだけのガキの集まりでしょ。ガキってきっと私よりは年上だろうけれども、きっと私なんかより人生経験の豊富なひとなのだろうけれど。
私、私。テレビと私。それ以外に学習机と椅子と本棚くらいが安心距離。
ガタガタ強風に音を立てる窓は敵、時々母がノックするドアも強敵。
だって母は転校させてくれない。学校にだって毎日のように行けと言うだけ。
窓の向こうの夜空のお星さまは何もかなえてくれないから。
去年の暮れ、某アイドルの解散を阻止してくれなかったから。
だから信じない。夜空のお星さまは、ただのガスの塊だって知ってるから。
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