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ところが、店の扉には張り紙があった。
――店主が体調を崩しましたため、しばらくの間臨時休業とさせて頂きます。
聡の母親は困った顔をしたものの、店内を覗いてその扉をゆっくりと開けた。
「すみません」
「え?」
そこにいたのは当時高校生の遊佐直樹だった。
「あの・・・・・・」
戸惑った様子で遊佐は聡の母親に話しかけようとしたが、
「すみません・・・・・・臨時休業だってことは分かっているんですが・・・・・・」
母親はどうにか事情を話そうとしていた。
そんな彼女の顔を見ていた遊佐は、はたと気づいて
『あ、神田さんですね』と言った。
「ええ」
高校に通いながらも時折店を手伝っていた遊佐は常連の名前と顔を覚えていた。
「実はお願いがありまして・・・・・・」
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