6人が本棚に入れています
本棚に追加
『御無理でなければ、で宜しいので・・・・・・』
と、聡の母親は遊佐に告げると、店を後にした。
「マスターのデザートねぇ・・・・・・」
遊佐は自宅に戻って一言呟くと溜め息をついた。
そして目の前の扉を開けると、そこにはマスターである父が寝込んでいた。
といってもこちらは風邪ではなく、持病の様になってしまったぎっくり腰だ。
遊佐は看病をしながら先程のことを話してみるものの、当然答えは
『無理だ・・・・・・こんな状態で料理は出来ない』
――じゃあ、断りの電話するよ
と、遊佐が言おうとした時だった。
「お前が作れ。ちょうど良い機会だ。デザートもレパートリーに入れておいた方がいい」「え?」
突然の言葉に驚く遊佐を余所に父は深く頷くと、目を閉じてしまった。
結局言葉を返せないまま『自分も元々は作らなかったくせに』と軽く心の中で毒づくと、
「甘いものなんて苦手だってんだ・・・・・・」
と今度はぼやいた。
最初のコメントを投稿しよう!