彼の甘い味が好き

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『御無理でなければ、で宜しいので・・・・・・』 と、聡の母親は遊佐に告げると、店を後にした。 「マスターのデザートねぇ・・・・・・」 遊佐は自宅に戻って一言呟くと溜め息をついた。 そして目の前の扉を開けると、そこにはマスターである父が寝込んでいた。 といってもこちらは風邪ではなく、持病の様になってしまったぎっくり腰だ。 遊佐は看病をしながら先程のことを話してみるものの、当然答えは 『無理だ・・・・・・こんな状態で料理は出来ない』 ――じゃあ、断りの電話するよ と、遊佐が言おうとした時だった。 「お前が作れ。ちょうど良い機会だ。デザートもレパートリーに入れておいた方がいい」「え?」 突然の言葉に驚く遊佐を余所に父は深く頷くと、目を閉じてしまった。 結局言葉を返せないまま『自分も元々は作らなかったくせに』と軽く心の中で毒づくと、 「甘いものなんて苦手だってんだ・・・・・・」 と今度はぼやいた。
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