25人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
…気持ち悪いな
容姿をバカにされることにはいい加減慣れたけれど、ここまで面と向かって無遠慮に謗りの目を向けられれば、当然ながらいい気はしない。
一つにまとめてはいるが腰にかかるほど長く伸ばした髪、どんなに日に晒されても焼けない肌、自分自身ですら性別を間違われることに納得してしまう女顔。
どう贔屓目に見ても男には見えないと、自分で分かっている、けれど。
配慮という言葉を持ち合わせない連中に嫌気が差すのは、何年経っても変わらない。
さっさとやり過ごそうと口を開きかけた矢先。
「その顔で男とかありえねーわ、いっそ性転換でもすれば?」
「たっは、そしたら俺の彼女にしてやるよ」
「お前もう彼女いるだろーが。抜け駆けすんなよ」
…地雷。
ふつりと、身体の中で何かが沸き立つ音がして。
一つ、二つ、三つと数える頃にはぐらぐらと煮え滾っていた。
急激に昇っていく血液が頭からつま先まで熱をもたらし、けれど対蹠的に思考はどんどん冷え切っていく。
ふっつりと千切れた理性が再び色を取り戻すのには、少し時間がかかりそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!