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呆気なく訪れた私たちの別れは、彼が運んできた。
元々弟に会うために通っていたのだから、弟が去れば彼もここに来る必要はなくなる。
一人で気軽に来て良い場所ではない上に、子供の身では尚更だろう。
ずっと前から理解していたことだったのに、離別の悲しみは想像以上に重かった。
『約束。何年経ってでも、また会おうね』
はらはらと零れ落ちて止まらない私の涙を優しく掬い、綻んだ彼の声が鮮明に甦る。
『いつかきっと会えますように…ってお守り。受け取ってくれる?』
疑問形なのに有無を言わさず押し付けられる桜貝の片割れ。
ずっと握りしめていたのだろうか、それはほんのりとあたたかくて。
体温を失いかけた私の手の上で、いつまでも、ほのかな熱を放っていた。
『君が会いに来れなくても、僕が迎えに行くよ。今までみたいに、どこにいたって見つけてあげる。
だから、さ……また会えたら、その時は―――――――……』
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